ノーコードで業務カイゼン

手作業からの脱却:非エンジニアがノーコード・ローコードでデータ集計とレポート作成を自動化する方法

Tags: ノーコード, ローコード, 業務効率化, データ集計, レポート作成, 自動化

導入:データ集計とレポート作成に潜む非効率性

ビジネスにおけるデータ活用は、意思決定の迅速化や業務改善において不可欠な要素です。しかし、多くの企業において、データ集計やレポート作成は依然として手作業に依存している場合が見受けられます。複数のシステムからデータを抽出し、それを統合、加工し、可視化する一連のプロセスは、多くの時間と労力を要し、その都度発生する非効率性が業務全体のボトルネックとなることも少なくありません。

本記事では、プログラミング経験のない非エンジニアのビジネスパーソンが、ノーコード・ローコードツールを活用して、このような日常のデータ集計やレポート作成業務を効率化し、手作業による負担とミスを削減する方法について具体的なアイデアと事例を交えてご紹介します。

日常業務に潜むデータ関連の課題

営業企画やマーケティング、あるいは事業部門において、以下のような課題に直面することは少なくないかもしれません。

これらの課題は、日々の業務効率を低下させるだけでなく、ビジネスチャンスの逸失や誤った意思決定につながるリスクも秘めています。

ノーコード・ローコードによるデータ集計・レポート作成の解決策

ノーコード・ローコードツールは、プログラミングの専門知識がなくても、視覚的な操作やシンプルな設定でシステム開発や業務自動化を実現する強力な手段です。これらのツールを活用することで、上記のデータ関連の課題を効率的に解決することが可能になります。

具体的な活用事例と導入アイデア

ここでは、非エンジニアのビジネスパーソンがノーコード・ローコードを活用して、データ集計とレポート作成を自動化する具体的な事例を3つご紹介します。

事例1: 営業日報データの自動集計と月次営業レポートの自動生成

多くの企業で、営業担当者は日報を作成し、それを手作業で集計している場合があります。このプロセスをノーコード・ローコードで自動化し、月次の営業活動レポートを自動で生成する仕組みを構築します。

活用ツール例: Google Forms、Google Sheets、Zapier(またはMake)、Google Data Studio (Looker Studio)

実現できること: * 営業担当者が入力した日報データが自動で集計され、リアルタイムに更新される。 * 月次レポートの作成作業が不要になり、分析や戦略立案に時間を割けるようになる。 * 営業状況の可視化により、迅速な状況把握と改善策の検討が可能になる。

具体的なステップ: 1. 日報入力フォームの作成: Google Formsで、活動内容、商談状況、訪問件数などの項目を含む日報フォームを作成します。フォームの回答は自動的にGoogle Sheetsに連携されます。 2. データ連携と前処理の設定: * Google Sheets上で、必要に応じて簡単な関数(例: SUM, AVERAGE)を用いて基本的な集計項目を設定します。 * Zapier(またはMake)を使用し、Google Formsへの回答が送信された際にトリガーを設定します。 * Zapier/Makeの機能で、日報データの一部を整形したり、特定の項目に基づいて分類したりする処理を設定します。例えば、商談状況に応じて「成約」「進行中」などのステータスを自動で付与する、といった処理です。 * 整形されたデータを別の集計用Google Sheetsシートに自動で転送するアクションを設定します。これにより、生データと集計用データを分離し、管理しやすくなります。 3. レポートダッシュボードの作成: Google Data Studio (Looker Studio) を使用し、集計用Google Sheetsシートをデータソースとして接続します。グラフや表をドラッグ&ドロップで配置し、営業活動の進捗、目標達成率、課題などを可視化するダッシュボードを作成します。一度作成すれば、データが更新されるたびにダッシュボードも自動で最新情報に更新されます。

事例2: 顧客からの問い合わせ情報の一元管理と対応状況の可視化

顧客からの問い合わせがメール、Webフォーム、電話など複数のチャネルに分散している場合、対応漏れや情報共有の遅れが発生しやすくなります。これをノーコード・ローコードで一元管理し、対応状況を可視化する仕組みを構築します。

活用ツール例: Google Workspace (Gmail, Google Sheets), Zapier(またはMake), Trello (またはAsana, Notion), Slack

実現できること: * 異なるチャネルからの問い合わせ情報が自動で一箇所に集約される。 * 担当者への自動通知により、対応開始までの時間を短縮できる。 * 問い合わせのステータスがリアルタイムで共有され、対応漏れを防ぐ。

具体的なステップ: 1. 問い合わせ情報の集約: * Webフォームからの問い合わせは、Zapier/Makeを使ってGoogle Sheetsに自動的に転送されるように設定します。 * 特定のメールアドレスに届いた問い合わせメールは、Zapier/Makeでメール本文から必要な情報を抽出し、同様にGoogle Sheetsに追加する設定を行います。Gmailの「特定のラベルがついたメール」や「特定のキーワードを含むメール」をトリガーとすることも可能です。 2. タスク管理ツールへの連携: Google Sheetsに追加された新しい問い合わせ情報をトリガーとして、Zapier/Makeを使ってTrelloのボードに新しいカード(タスク)を自動で作成するアクションを設定します。カードには、問い合わせ内容の要約、顧客名、対応期限などの情報を付与します。 3. 担当者への通知と状況共有: * Trelloに新しいカードが作成された際、Zapier/Makeを使ってSlackの特定のチャンネルに「新しい問い合わせが届きました。担当者は〇〇さんです。」といった内容を自動通知します。 * Trelloのカードが「対応中」「完了」といったステータスに更新された際も、Slackに自動で通知する設定を加えることで、チーム全体で対応状況をリアルタイムで共有できます。 * これにより、各担当者が自身のタスクをTrelloで管理しつつ、チーム全体で進捗を把握できる体制が整います。

事例3: 社内申請データの自動集計と承認プロセス後の結果レポート

経費申請や備品申請など、社内での各種申請業務は依然として紙やメールで行われているケースが多く、集計や承認プロセスの進捗確認に手間がかかります。これを自動化し、承認された申請のデータを自動で集計・可視化する仕組みを構築します。

活用ツール例: kintone (またはAirtable, SmartSheet), Zapier(またはMake), Google Sheets, Google Data Studio (Looker Studio)

実現できること: * 申請から承認までのプロセスがシステム化され、進捗状況が明確になる。 * 承認済みの申請データが自動で集計され、特定の期間や部署ごとの集計レポートが容易に作成できる。 * 申請に関する問い合わせ対応の工数を削減し、透明性を向上させる。

具体的なステップ: 1. 申請フォームの作成とワークフロー設定: kintone(またはAirtable、SmartSheet)で、経費申請や備品申請などのフォームを作成します。これらのツールにはワークフロー機能が備わっているため、申請、承認、却下といったステータス遷移や、承認者の設定をノーコードで設計できます。 2. 承認済みデータの連携: kintoneのデータが「承認済み」のステータスになったことをトリガーとして、Zapier/Makeを設定します。このトリガーが発動した場合、申請に関する詳細データ(申請日、申請者、部署、金額、承認日など)をGoogle Sheetsに自動で追加するアクションを設定します。 3. 集計レポートの作成: Google Sheetsに連携されたデータを基に、Google Data Studio (Looker Studio) を使って、月ごとの申請件数、部署別の申請金額、承認済み申請の平均処理時間などを可視化するレポートダッシュボードを作成します。これにより、申請プロセスの健全性やコストの傾向などを容易に把握できるようになります。 4. 関係者への定期レポート送信(オプション): Zapier/Makeを使用して、月に一度、自動的にこのレポートダッシュボードのPDF版を生成し、関連部署の担当者(例: 経理部、総務部)へメールで自動送信する設定を加えることも可能です。

導入に向けた考慮事項

ノーコード・ローコードツールの導入は、業務効率化の大きな一歩となりますが、いくつかの考慮事項があります。

まとめ

データ集計やレポート作成といった日常的な業務は、手作業で行うには多くの時間と労力がかかります。ノーコード・ローコードツールを活用することで、これらの業務は大幅に効率化され、手作業によるミスを削減し、より戦略的な業務に時間を充てることが可能になります。

プログラミングの知識がなくても、これらのツールは直感的な操作で利用できるよう設計されており、非エンジニアのビジネスパーソンでも業務課題を自ら解決し、業務変革を推進する強力な武器となり得ます。まずは、自身の業務の中から「これは自動化できるかもしれない」と感じる小さなタスクを見つけ、ノーコード・ローコードの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。そこから得られる成功体験は、さらなる業務改善への大きな推進力となるでしょう。